第4号2016.9より

 安曇野市は米の生産量が長野県で一位という稲作地帯でもある。安曇平と呼ばれる、盆地の底に当たる辺りはその名の通り平らで整備も進んでいるので、田んぼ一枚の面積はそこそこ広く、形も作業がしやすい長方形が多いが、僕たちが住むことになった家は山際で、周りには棚田のような段々で、いびつで狭い田んぼばかりだった。そのような田んぼは大型機械が入れず効率化が進まない。規模拡大を目指す大きな農家は借りないので、高齢化と相まって地区の半分くらいは遊休農地となっていた。これは僕たちにとっては好都合で、農業委員に地主を紹介してもらい、家のすぐ近くの田畑を順々に借りることができた。いきなりやってきた就農希望者に簡単に貸してくれないことも多いと聞くが、これも土地柄なのか、殆どの場合、「どうぞ」とか「助かるよ」とか「あなたたちのような若い人を応援したいのよ」と快く貸して下さる方が多く、家から歩いて行ける範囲で数枚使わせてもらえることになり、本当に助かった。こうして、家に続いて、農地の準備も整った。

2018年05月08日